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No.20【書評】「ITビジネスの原理」/尾原和啓

ITビジネスはどうやって稼いでいるのか、日米のITビジネスの違いなどについてかかれれたこちらの本、おもしろかったので書評してみようとおもう。 

ITビジネスの原理

ITビジネスの原理

 

 

ITビジネスの稼ぎ方

ビジネスの基本は、「安く仕入れて高く売る」ということである。

18世紀、ナポレオンの大陸封鎖によってイギリスの綿の価格が大暴落し、ネイサン・ロスチャイルドは綿を大陸に密輸入することでアービトラージで莫大な利益を手にしたり、また、大航海時代にはスペインがインドから安く香辛料を仕入れて欧州で高く売ったりしたように、「安く仕入れて高く売る」はビジネスの基本原則であるとおもう。

 

著者はこれを、

(その商品を)安いと感じているところから仕入れて、高く感じているとところへ売る

と表現している。

 

「感じている」というところが大切で、この「価格差」によって利益をあげている人は、「場所によってこの商品の価値は異なる」という情報を独占しているからこそ儲けることが可能になっている。

 

 インターネットの発達によって、情報が民主化され、売り手と買い手の情報の格差が小さくなったことでこういったビジネスは難しくなってきた。

 

一方で発達してきたITビジネスとは、インターネット上でユーザーを一か所に集め、そのユーザーを欲している企業に売るという、「ユーザーを安く仕入れて高く売る」ビジネスだという。

 

情報取得のコスト

この本には「情報取得のコスト」という言葉がなんどかでてきて、だいじなポイントだなーと感じた。

これは、スマホによって世の中便利になったけれども、まだまだ便利になる余地がありますよ、というお話しで、たとえば料理の写真をスマホで撮ってインスタにあげるとき、インスタを起動し、写真を撮り、それを選択してアップロードするという数ステップが存在する。

 

これが将来ウェアラブル端末にとってかわれば、「パシャ!」みたいななんか呪文のようなものをとなえるだけで目の前の景色を写真にとり、いい感じで加工し、勝手にネット上にアップロードできるようになるかもしれない。

 

情報取得のコストが低減することによっておきる変化は、単にその時間が浮く、というだけにとどまらなくて、たとえば料理の写真をインスタにアップするときは、いまはまだ、「スマホに集中しなければならない時間」が存在する。

息をするように写真をアップするというわけにはいかないので、温かい料理がすこし冷めてしまうということもおきる。

スマホのスクリーンがVRのように仮想的に目の前に表示されるようになり、それもメガネとかかけなくてコンタクトレンズのようなものになったら、おおきな変化がおきるんじゃないかなーとかんじた。

 

日米の違い

アメリカは商品を売るビジネスだが日本は物語を売るビジネス」という話が後半で語られる。

アメリカという国は、「もともとアメリカ人じゃなかったひともアメリカ人になれますよ」という寛容な国であるがゆえ、同質性が低く、アメリカ人同士で共有する物語が少ない。

同質性がひくいので、法律になんでも書き、契約によってビジネスがおこなわれる。

 

他方で日本は同質性がとても高いので、契約なんか結ばなくても共有するコモンセンスが存在する。

 

同質性が高くて他人と「物語」を共有できるので、「これおいしかったから食べてみて!」と、他人とコミュニケーションをするために消費活動をおこなう。

 

合理だけでビジネスをしていない、という点は最近自分もすごい感じていて、たとえばSaaSで有名なSmartHRには、サービスに対する根強いファンがいるが、Salesforceにはそういう側面をあまりかんじない。

 

SmartHRにファンがいることはnoteやツイッターで検索するとよくわかるとおもう。

SmartHRは、機能追加の情報を専用のWebページにアップしていて、それを見ているユーザーのなかには「いっしょにサービスをそだてている!」といった感覚をもっているひともいる。

業務効率化サービスなのでもちろん、「業務量を1/3にへらせます!」という合理性をうたうメッセージを押し出しているけれども、「愛されサービス」になっていることがSmartHRのつよさなのかな、とおもう。

 

 

 

自分もSaaSを開発している身だけど、「合理性」以外の要素をだいじにしたいな、とかんじるようになってきた。

理由は単純で、「合理性で勝負したらグーグルにかてないから!」(笑)

 

どういう「物語」を構築するか、よくかんがえなきゃなーと感じた本でした。

書評おわり!