No.8 ひろゆき『働き方 完全無双』を読んで ①
2ch、ニコニコ動画でおなじみのひろゆきさんの新著『働き方 完全無双』を読んだ。
これからの日本で労働者はどうやって働いていったらいいのか、ということを、日本経済のしくみに着目して書かれた本。
ブラック企業問題やベーシックインカムなどについても語られている。いい本だとおもったので書評をかいてみる。
序 まずは「個人」と「社会」を分けるとこから
本著をとおして、ひろゆきさんの考え方の根底にあるのは「日本経済はこれから停滞を続ける」ということだ。
社会は停滞していくなかでどうやって個人は豊かになれるのかを考えるとき、「個人」の問題と「社会」の問題をわけなくてはならないとのこと。
例えば日本人は生活保護を受給するくらい生活が困窮しているひとであっても、「働かなければならない」という考えがとても強い。これはぼくの身近でもそういう話をきいたことがあるのでわかる。社会的な体裁などを気にして受給に踏み切れない人は多いと思う。
だがこれがアメリカやフランスだったら、「私は自分の権利を追求しているだけです」という考え方があるだけ、と著者はいう。
たしかに多くの人が生活保護を受給するようになってしまったら社会としては問題だろうが、それは政治家が解決すべき問題であって、個人の問題としてとりあげるべきではない。日本は「個人の問題」と「社会の問題」がごちゃごちゃになっているので、社会に追求すべき課題を個人に課したりする、ということだとおもう。
第1章 能力なんてものは存在しない
近年誕生したさまざまなネット上のサービスでは、たとえばYoutuberや、ニコニコなら歌い手・生主、ブロガー、など有名人が誕生したが、彼らの能力が高かったのかというと、もちろん能力もあるだろうが、「早くからそこにいた」ことが大きいだろうという。なので新しいことに首をつっこんでおくとどれかワンチャンあたるかもよ、というお話。
Webサービスは無料ではじめられるものも多いのだから、「とりあえずやってみる」という姿勢で損しないとおもう。
第2章 あなたが社会に殺されないために
近年、不当な金融業者、いわゆる「サラ金」の数はぐっと減っている。
これはサラ金を訴える弁護士が増えたためだという。そこでひろゆきさんは、残業代をはらわないブラック企業も弁護士の標的になることを願っているという。
将来的には、企業のブラック体質は外注先が標的になるのではないかという。自社の社員であれば労働法を守って働かせなくてはならないし、最低賃金だって守らなくてはいけないが、外注先となれば労働者の保護義務を企業が負わなくていいからだ。
これは自分もそうおもう。
現在アニメーターの仕事はそれだけでは食べていけないくらい低賃金だが、かれらは業務委託としてはたらく個人事業主なので最低賃金など存在しない。
最低賃金・解雇規制のような労働者を保護するルールは、あくまで「労働者」にしか適用できないので、あまりムチャなルールを作ると業務委託が増え、ブラックな実態が見えなくなるだけ、ということになりかねないと自分は思っている。
月7万円を国民全員に配って、解雇規制は廃止すべきという。これが実現されれば、企業は労働者の生活保障から解放され、純粋に資本主義の原理にしたがってビジネスにむかえばいいことになる。
当然競争に敗れる人もでてくるだろうが、BIによって最低限の生活は保障されているし、企業側の「雇うコスト」が減少するので気軽に雇うことができるようになるだろう。
ぼく個人の考えとして、「誰もが一度や二度は会社をクビにされたことがある社会」が健全であり、むしろ「会社の業績が悪くなることを前提としない雇用制度」は日本のあらゆるところに歪みをうんでいるとおもっているので、この考え方は全面的に賛同する。
そもそも、解雇規制が強くなければ「正規・非正規」などといった問題は存在しなかった問題であり、最低賃金というものも「時給500円の仕事ならできる人」から仕事を奪っているだけである。
企業がビジネスを追求することで弱者が生まれてしまう問題は社会保障として解決すべき問題であり、日本はいわば国の責務である社会保障を企業に負わせているだけだとおもう。
第3章 会社がずっと生き残るわけないじゃん
本章のタイトルにも、流動的な雇用状態が望ましいと考えるひろゆきさんの考え方があらわれている。
ぼくも同感である。会社がずっと生き残るわけはないし、それは望ましくもない。日本の大企業に古い会社が多いのは新陳代謝がおこらないからであって、経済にとってよいことだとは思えない。
本章では、「優秀なやつの足をひっぱる日本社会」、「新しいものを忌避する日本社会」がかたられる。
こんにゃくゼリー事件、セグウェイ、ドローン、クラブ、P2P、ユッケなど、日本では法律で禁止・制限されたりバッシングされたりしたものがたくさんある。
日本は「よくわからないものはとりあえず禁止しよう」という「新しいものアレルギー」がとても強い。
ここまでひろゆきさんの本を読んでいて、これも「個人」のない日本社会ならではなのかなと思った。
日本人の頭の中には、「ユッケを楽しむ個人の権利」などないのだとおもう。これがアメリカであれば、最優先されるべきは「個人の自由」であって、それを政府が徒に制限することは許されないだろうが、日本の場合には「悪徳業者」にだけフォーカスした議論が展開され、個人という概念がないので「ユッケ禁止にするのが楽だな」という意見が通ってしまう。
後半では、日本は観光大国を目指すべきだという話が語られる。
これは経営者たるひろゆきさんらしい意見だとおもった。たしかに日本にくる観光客が見に行くところといえば京都の寺社や、各地のお城など歴史的な建造物の人気は高いと思うが、それらは「そこにあるだけで客を呼び寄せる」ことができる。
工場で人を雇ってなにか作ってもらおうといえばコストがかかるが、神社やお寺など、現代人がもの心ついたときからそこにあったものであって、状態を維持するコストを負担するだけでいいので観光業はてっとりばやく儲ける手段だとおもう。
======
以上、書評でした。
本書は日本的な価値観にとらわれないひろゆきさんならではの考え方が満載で、とてもおもしろく拝読しました。
なお、ひろゆきさんの前著『無敵の思考』は「得する考え方」がさまざま記載されていて、こちらもおもしろかったです。
無敵の思考 ――誰でもトクする人になれるコスパ最強のルール21
- 作者: ひろゆき
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2017/07/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (2件) を見る