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No.5 落合陽一『日本再興戦略』を読んで

今日は、落合陽一さんの新著『日本再興戦略』を読んでみた。

若い科学者が日本の歩むべき道を示す本である。

落合さんの考えには自分もかなり賛同する部分が多く、いっしゅんで読み終えた。

以下、書評をかいてみる。

 

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

 

 

 

第1章 欧米とはなにか

 

第1章では、以下の文章が目をひいた。

戦後の工場は同じものを大量に安くつくることに集中していましたが、今は、個々人のニーズに合った多様なものを柔軟につくることを求められています。

 

落合さん曰く、今までの日本企業が歩んできた、自社でイチから全部作ってしまう垂直統合型」の経済は、多様なものを柔軟につくることには適さない。

 

日本経済が戦後築き上げてきた垂直統合型の企業構造は、重工業のような産業とはよく馴染み高度経済成長をもたらしたが、現代の経済には適応できなくなっている、という話は経済学者の野口悠紀雄さんなども著書の中で示していることである。

 

米国のアップルが高収益なのは、自社で工場を持っておらず、製造は中国の会社に任せているからだ。

そうすれば、設計とマーケティングという付加価値の高い仕事にだけ従事することができる。

日本の垂直統合型の「なんでもウチでやります!」スタイルは、正社員・終身雇用・年功序列制度とセットであり、ひとつの道を突き進むには適していたのだろうとぼくはおもう。

しかし、80年代のおわりに成長は鈍化し、アメリカという「先生」のいうことに従うのではなく、まだ誰も歩んでいない道を切り拓いていかねばならなくなったとき、このシステムは機能しなくなった。

 

今、日本に必要なのは「失敗しやすい環境の構築」だと思う。

まえのブログでも書いたことだが、グーグルやフェイスブックの成功の裏には、無数の失敗した企業の残骸が転がっているはずである。

「先生」がいなくなったいま、日本はトライアンドエラーを繰り返し、苦闘しながら「まぐれあたり」を見つけるしかない。

したがって、正社員・終身雇用制度という、企業が40年後の成長を保証して人を雇わねばならない、企業の失敗を前提にしていない雇用制度が機能しないのは当たり前である。

 

 

 

第4章 日本再興のグランドデザイン

 

第4章では、人口減少の日本だからこそ握っている大チャンスと、ブロックチェーンの未来などについて書かれている。

落合さんによれば、人口減少・高齢化がチャンスととらえるべき理由は3つ。

  • 省人化しても反対がおきにくい
  • 日本のあとに続いて中国などが高齢化するので、高齢化対策のソリューションは輸出戦略になる
  • こどもの数が減るので教育コストをかけられるようになる。

 

ぼくはこの中でとくに1つめに注目している。

AIやブロックチェーンの発達で、技術的には省人化していくことは可能だが、少子高齢化というのはそれを政治的にも可能にするとおもう。

 

新しい技術の発達によって社会がよりよく変わる萌芽を見せ始めた時、注意深く考えなければならないのは既得権益をもつ人をいかに包摂するか」である。

 

現在、中国などで無人コンビニなどは実現しているが、これが日本のコンビニでも一般的に導入されるようになれば、今コンビニで働いている人は仕事を失う。

そうすると、コンビニで働く人にとって技術の発展というのは脅威なので、技術の導入に反対するようになる。

しかし、これも前のブログでかいたことだが、2017年は1年をとおして失業率がおおむね3%以下をキープし、「人手不足」が大きなテーマになった年だった。

 

技術革新によって仕事を失う人はたしかにうまれるだろうが、人口減少によってそういうひとの存在を減らすことができ、仕事を失ったひとびとがより高次の仕事へ就くことを可能にする時間的な猶予ができれば、レベルアップした社会に生まれ変わることができるとおもう。

 

かつて産業革命があったときも急激に省人化はおこなわれたわけだけど、それでひとびとはみんな仕事を失って貧乏になったわけではなく、より高次な仕事につき、富を劇的に増やすことに成功した。

AIが人間の仕事をとって変わるようになる未来を、ぼくはいまのところ楽観的にとらえている。

 

また、落合さんは同じく4章でブロックチェーンについても触れている。

日本は中央集権的なシステムだったことはほとんどなく、地方自治こそ日本に合うので、非中央集権的なブロックチェーンは日本になじむだろうと書かれている。

 

そのとおりだとおもう。

かつて日本が日米開戦に突っ込んだときも、日本はいっぱんにイメージされているような中央集権的(独裁的)な体制をしいていたわけではない。

帝国憲法を素直に読めば、当時の日本はあらゆる権力が天皇に帰属するようになっていたわけだが、実際には天皇に拒否権があったわけではなかった。

 

首相をえらぶときには、法的に立場が保証されているわけでもない「元老」というポジションの人間が「次の首相はこの人でどうですか」と天皇におすすめし、天皇はそれを受け入れるのみであった。

元老というポジションは明文化されているわけではなく、維新の元勲たちが担っていた。「こうすれば元老になれます」というルールがあったわけではないので、元老がいなくなればそのポジションは権力の空白と化し、その穴をうめるように軍部が台頭した。

 

こういう「誰に責任があるのかよくわからず、ハッキリしない」スタイルが最悪の結末を迎えたのが日米開戦である。

東条英機だって首相とはいえ、陸軍の情報については統帥部と陸軍省がわけもっていて首相にはなんの情報も与えられなかったので、陸軍大臣参謀総長を兼任しないと継戦に必要な権力を手にすることができなかった。

 

いいか悪いかは別として、こういう非中央集権的なスタイルは日本的で、これはブロックチェーンのような技術と相性がいいとぼくもおもう。

 

また、日本のサラリーマンは会社がキライだ。

嫌ならやめればいいのだが、転職活動に失敗したわけでもないのになぜか同じ会社に終身勤めたがる。

最初から定年まで勤めあげることを前提に働いているので、一度会社が嫌になってしまうと、以後低いモチベーションでずっと働くことになる

これは裏を返せば、日本には、仕事のスタイルを変革することに関して、莫大な需要があるということ。

これはとても大きな市場である。

ブロックチェーンによって個人が組織に所属せずとも信用を手にすることができるようになれば、個人が大きなビジネスをすることも可能にする。それは会社嫌いな日本人の特徴と相まって個人の爆発的な成長を後押しするとぼくはおもう。

 

 

以上、書評でした。

考えるきっかけを与えてくれる、すばらしい本でした。

この本が何万部も売れているというので、これからの日本の未来は明るいな、とおもいました。